「ぞっとしない」を「ぞっとする」の否定形と思っている方が多いようですが、それは間違いです! 「ぞっとしない」は「感心しない・面白くない」が正しい意味で、「恐ろしくない」という意味ではありません。
ではなぜ「ぞっとしない」が「感心しない・面白くない」という意味になるのか? なぜ「恐ろしくない」と解釈するのは間違いであるのか? 「ぞっとする」と「ぞっとしない」の意味の違いを解説します。
※画像の答え
「ぜ〜んぜんぞっとしないけど、とりあえず笑ってみる」
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「ぜ〜んぜん面白くないけど、とりあえず笑ってみる」
【目次】
「ぞっとする」の意味
「ぞっとする」には以下の3つの意味があります。
- (1)恐ろしさで身の毛がよだつ、恐怖で身体が震え上がる
- (2)寒さで身体が震え上がる
- (3)強い感動が身体の内を走り抜ける
おそらく「ぞっとする」の用法として最も広く知られているのは(1)の「恐ろしさで身の毛がよだつ、恐怖で身体が震え上がる」でしょう。怖いものを見たり聞いたりした時に「ぞっとする」という表現をよくしますよね。
(2)の「寒さで身体が震え上がる」も恐怖で寒気を感じるという意味も含まれているため、(1)と似たような用法です。
問題は(3)の「強い感動が身体の内を走り抜ける」という用法。(1)と(2)は恐怖や寒気で身体が震えるという意味ですが、(3)には感動によって身体が震えるという意味が含まれています。
実は「ぞっとしない」の用法を理解する上でこの(3)の意味が重要になります。
「ぞっとしない」=「恐ろしくない」は誤用
「ぞっとする」=「恐ろしい」という意味から、「ぞっとしない」=「恐ろしくない」という意味になると考えてしまいますが、実はこれは間違い。なぜなら「ぞっとしない」は「ぞっとする」の否定形ではないからです。
「ぞっとしない」は慣用的な言い回しであり、「ぞっとする」を否定したものではありません。「ぞっと」=「恐怖」という意味であることから、「ぞっとしない」は「ぞっとする」の否定形であると考えている方が多いですが、「ぞっとしない」の「ぞっと」には「恐ろしい」という意味は含まれていないのです。
「ぞっとしない」=「感心しない・面白くない」
「ぞっとしない」は「感心しない」「面白くない」という意味の慣用句です。他にも「嬉しくない」「興味がない」という意味でも使われます。
- 感心しない
- 面白くない
- 嬉しくない
- 興味がない
- 気が重い
- 歓迎しない
「ぞっとしない」は慣用的な言い回しなので、この言葉自体が「感心しない」「面白くない」という意味です。上述したようにぞっとする」には「強い感動が身体が震える」という意味があるため、その否定形として「ぞっとしない」=「感心しない」「面白くない」であると解釈すると分かりやすいかもしれませんね。
たとえば「ぞっとしない」は以下のように使います。
「この映画はあんまりぞっとしない(面白くない)」
「子供が夜更かしするのはぞっとしない(感心しない)」
「その褒め言葉はぞっとしないね(嬉しくない)」
これらの文章を「ぞっとしない」=「恐ろしい」と解釈すると文脈がおかしくなってしまいます。「この映画はあんまり怖くない」というのはまだ分かりますが、「子供が夜更かしするのは恐ろしくない」「その褒め言葉は恐ろしくない」となると意味が分からないですよね。
普通に「この映画は面白くない」「夜更かしは感心しない」と言えばいいのですが、「ぞっとしない」は小説や漫画などでよく使われる表現なので覚えておきましょう。